良くも悪くも

名前の通り沼にいます

WEST的王国物語~闇~

前の記事~光~の続きです。こちらから読んでいただいてもまあ支障は無いですが、伏線的に光から読んでいただけると幸いの極みでございます。

そしてやっぱり闇ですので、光よりは闇的な表現を含みます···。ご了承を

 

 

〈ダークサイド〉

タカヒロ···ボス直轄部隊隊長

基本目が死んでます。私の大好物です。はい。

ボス直轄部隊と聞けば誰もが恐れる最恐最悪部隊。彼らが動けば国の一つや二つ、1日かからずとも潰せると言われるほど。その部隊の隊長と来れば肩書だけで剣を上げずとも戦えるくらい恐れられる存在。そしてタカヒロは名実共に歴代最強であった。彼の目は海の底より冷たく、人を何人殺しても表情は一切変わらない。今までどれ程の人を殺してきたか数知れずであった。しかし彼は昔からそのような男では無かった。なぜなら彼は王族出身なのだから。

タカヒロは昔王国騎士団次期団長と噂されていた。確かな実力、誰からも愛される人の良さ。年が近くいつも一緒にいたジュンタとは「天才軍師と最強騎士」と国中の女性たちのハートをわしづかみにしていた。団長になるには申し分無かった。だが、彼の人生はある一つの戦いを境に大きく変わっていく。

その戦いは今までで一番大きな王国と組織との争いであった。もちろん王国騎士団も参戦し、戦果を上げた。だが同時に多くの死者を出した。タカヒロはその激しい戦いの第一線にいた。そのチームのリーダーとして指揮を取り、奇跡的にチーム誰一人欠けることなく城に帰ってくるはずだった。部下の一人がいきなり姿を消した。その事に気付いたのはタカヒロだけで、他のメンバーは気にも止めなかった。探しに行かねばならないが、もしチームで動いたら見つかるかもしれない。そしたら彼らが死ぬ。彼は一人で激しい戦禍の中に飛び込んでいった。それが彼の終わりの始まり。部下が連れ去られたであろう細道に入った瞬間タカヒロの意識が途切れた。目を覚ますと見知らぬ天井、担架らしき物にくくりつけられた身体。そして自分を取り囲む組織の奴ら。俺死ぬんやな、やらかしたわ、一回だけでも女の子と付き合いたかったなと思いを巡らせていた時、頭上から「どっちがいい?」と声が降ってきた。自分に話しかけたのがこの人懐っこい犬顔の男ということに気づくのは遅くなかった。犬顔の男はこう言った。「君の剣の腕を見込んで選択肢をあげる。1つめはこのまま担架ごと600℃の炎に突っ込まれる。2つめは王族での記憶を全部消して我が組織に仕える。二つに一つやろ?」タカヒロは決めていた。「殺してくれ」すると犬顔は「そう言うと思った(笑)だから絶対殺してやらへん」と笑い、タカヒロは何かの薬品を注射されまたそこで意識が無くなった。目が覚めた頃には自分がなぜここにいるのかも今まで何をして来たかもわからなかった。王族での暮らしはタカヒロの頭に戻ることはきっと一生無い。

それでも彼は持ち前の人の良さで組織の中でも慕われた。記憶を無くしても剣の術は身体が覚えていたのですぐに組織一となった。ある日、まだ小さな子供がタカヒロに話しかけてきた。「僕をあなたの弟子にしてください!」彼は変わった子だ。組織にいる子供たちは基本的に目に生気が宿っていない。なのに彼はキラキラとしている。その日からいくら断ってもノゾムは絡んできた。諦めるだろうと踏んで彼の年齢じゃ到底できっこない条件を出してみたが、いくら失敗しても少年は突き進んできた。とうとう根負け。弟子にすることを決めた。そのすったもんだの間、組織の活動も落ち着いていた。平和な日々が続いていくと思っていた。

突然組織の幹部に呼び出された。「この町を壊滅させろ」その町は小さくてのどかなきれいな場所。でも組織の命令は絶対。タカヒロを含めた部隊でその町の壊滅をスタートした。町外れの小さな家までたどり着くと、中にはベッドに寝ている女性がいた。そして傍らの写真立てにはいつも絡んでくるノゾムの写真が入っていた。いつも鈍感なタカヒロでもさすがに気付いた。この女性はきっとノゾムの母親。躊躇った。でも組織からの命令は壊滅なのだ。壊滅とは町民全員の消去、町全てを焼き払うことを意味する。少しでも隙を見せれば、組織の威厳に関わる。タカヒロは刀を女性の首筋に当て一気に引き抜いた。

壊滅作戦から数日。タカヒロは自分のしていることに疑問を抱き始めていた。ノゾムの顔を見る度に罪悪感で死にそうになる。タカヒロが思い悩んでいるある日、ノゾムが組織から消えた。裏切り者が表れたと組織では大騒ぎになったが、彼は優秀だということをこの組織で一番知っているのはタカヒロだ。きっとノゾムなら逃げ切れる。そして数日後ノゾムは王国騎士団に入団したらしいという噂が入ってきた。いくら組織でも王国に入られてしまったら手が出せない。タカヒロは内心ホッとしていた。ノゾムのこれからの人生が幸せであるように願って。そして自分も組織を抜ける決心をした。その事をボスに報告に行こうとした矢先、またタカヒロは意識を失った。目を覚ますと記憶の片隅にある狭く暗い部屋。そこにいたのはあの時と同じ犬顔の男だった。「今なーあんたに抜けられたら困るんよね(笑)強いし。やから、脳に細工するわ!」「え?」「あんたの脳から悲しいとか寂しいとか罪悪感?的に感じる感情を全て消す。ほな!またー」と男は出ていった。その日を境に彼は人間では無くなった。こうして世にも恐ろしい殺人兵器恐怖の隊長タカヒロが完成した。

 

リュウセイ···史上最恐の殺人研究

流星さんの白衣とメガネが見たいとかそういう理由じゃないです。ほんとに。ええ。

組織の薬品関係を一手に引き受けるマッドサイエンティスト。彼の力を使えば、毒薬、生物兵器覚醒剤など何でもござれ。

幼くして両親を亡くしたリュウセイはいわゆる「天才」だった。勉強の全てが理解できてしまい、面白さを感じることが無かった。施設に引き取られてからもその天才っぷりは健在で、少し話題になった。そして秀でていたのは頭脳だけでなく、端正な顔立ちもであった。 彼はいつからか「神童」と呼ばれるようになり、リュウセイの話を聞き付けた政府が国として彼を引き取る話が出た。自分の身に興味が無かったリュウセイはされるがまま国に引き取られ、いきなり田舎町から大都会に引っ越した。そこでリュウセイは都会の進学校に通うことになった。その進学校リュウセイは顔立ちや頭脳も相まって主に男子生徒からいじめにあった。なかなか壮絶なものだったが、リュウセイは全く気にしてなかった。そもそもリュウセイは他人、そして自分にさえ興味が無かったから。彼がいじめられていると気付いた政府が対策として学校に行かなくていいようにした。それからリュウセイは政府が用意した部屋に軟禁状態で様々な研究をさせられた。彼の周りの大人たちはリュウセイをやれ医者だ、やれ政治家だと囃し立てた。それでもリュウセイは興味が持てず、大人たちは頭を悩ませた。

ある日、リュウセイは研究所の前にある砂浜に出た。そこに研究所から逃げ出した1匹のマウスがいた。リュウセイはほんの興味本意でそのマウスを捕まえ海に沈めた。その時リュウセイは得体の知れない高揚感に包まれた。マウスを沈めたり上げたりすることが今までに感じたことの無い感情を得ることができた。そう、彼は生まれながらのサイコパスだった。人を救うよりも壊す方に魅力を感じたのだ。やっと自分の性格を理解したリュウセイだったが、だからといって研究所から解放されることは無かった。楽しくもない日々を過ごし、時に動物の命を奪う。これが永遠に続くと思っていた。あの方が来るまで。

あの方とは組織のボス。施設に囲われたリュウセイの目を見てすぐ「うちの組織に入らないか」と言った。組織が何かも知らないのに、リュウセイは本能で「この人なら好きなことをさせてもらえるかもしれない」と感じた。そして数日後の深夜リュウセイは組織へと加入し、世にも恐ろしいマッドサイエンティストへの道がスタートした。(ちなみに流星はその後の訓練により射撃もプロ級)

 

トモヒロ···組織が誇る天才暗殺者

神山くんって本当に暗殺とか上手そうじゃない?器用だし。うんそれだけ。

トモヒロは志願して組織に加入した。彼がいた施設を組織が壊滅させようとした時、トモヒロ自身がここでこのまま死ぬならとそこにいた組織の人間(たまたま幹部だった)に「俺を入れてくれ。絶対使えるやつになるから」と懇願した。トモヒロの目を見た幹部の男があの方に相談したところ、「面白い。入れてみよう」とあの方の興味本意で加入。訓練を受けた。訓練がどんなに激しくても、どんなに罵られようともバカにされようともトモヒロは耐えて耐えてついに訓練生トップの成績までたどり着いた。将来は幹部を約束されているとまで言われた。そしてトモヒロには尊敬する人が出来た。剣の訓練指導をしていたタカヒロだった。素晴らしい剣さばき素晴らしい身のこなしはトモヒロを惹き付けるには充分だった。でもなかなか話しかけられる存在では無く時々質問をするだけだったが、それでもトモヒロは満足だった。だが、そんな日々を乱す新たな訓練生が現れた。ノゾムとかいったその男は急に来たくせに、優秀だった。そして何より自分が尊敬して止まないタカヒロに馴れ馴れしかった。ノゾムの行動がいちいち鼻についた。

その当時組織の訓練生の中で戦って誰が一番か決めるというのが流行っていた。トモヒロは断トツで強かったため、誰からも勝負を求められなかった。だがノゾムが続々と訓練生を倒していってるらしいという噂が耳に入った。そしてもう闘ってないのはトモヒロだけらしい。みんなにせがまれ、ノゾムと決闘することになった。トモヒロは内心余裕だった。いくら強いとは言ってもここまで努力をしてきた自分よりは確実に弱いだろうと。でもその余裕は一瞬で打ち砕かれた。トモヒロはノゾムに負けたのだ。しかもわずかな時間で。後から聞くと一番長かったらしいが、そんなことは問題ではない。負けたのだ。これまで血が滲むなんてもんじゃない努力をしてきたトモヒロにとって、それは今までの努力を捻り潰されたのと同じだった。しかも尊敬するタカヒロの弟子として認められたらしい。自分がいくら願っても届かなかった席をいとも簡単にノゾムは手に入れた。そして今まで組織内での地位は確約されていたのに、一度負けた者に周りは冷たかった。「あいつもどうせ負けたのか」「大したこと無かったな」「一番競ったらしいぞ」「結局は負け犬だけどな」毎日のように周りはトモヒロから離れていった。

そんな時ノゾムが組織から消えた。組織中が大騒ぎだったがトモヒロはほくそ笑んでいた。どんな形であれノゾムは組織には帰ってこられない。ということはまたトップはトモヒロになるのだ。またみんなが褒めてくれるのだ。でもそんなに甘くはなかった。ノゾムが消えて一番罵倒されたのがトモヒロだった。訓練生のリーダーだったトモヒロは「何をしていたんだ」「お前が悪いんだ」と叱られ、最終的に「負けた腹いせにお前が消したんじゃないのか」とまで言われた。トモヒロは理不尽に耐えきれなくなった。そんなある日、組織のスパイから声をかけられた。「なんか大変そうやなあ。俺な!トモヒロは絶対暗殺者に向いてると思うんよ。そっちの仕事空いてるけど良かったらどう?」と。人を信じられなかったトモヒロは誘いに乗った。そこでトモヒロは天性の暗殺の才能を発揮した。自分が輝ける場所はここだと確信したトモヒロは暗殺者という暗く狭い人生に身を投げた。

 

アキト···組織一謎めいた明るいスパイ

この物語でたぶん一番怖いです。照史くんにこんな役して欲しいなって。笑顔で人を陥れるような。実はちょいちょい出てきてるよ。

アキトは組織では異質な存在だった。暗く重い雰囲気が流れる組織において、彼は常に笑顔、そして常に明るかった。彼のことを何も知らない連中からすると、いつもヘラヘラしてるちゃらんぽらん野郎。だが、彼と少しでも関わると気づく。彼は只者では無い。彼の頭の中は到底誰にも理解できないほど入り組んでいる。そして彼が本気を出したところを見た奴はどこにもいない。

そもそも彼はあの方の子供である。子供と言っても正式な子供ではない。あの方と愛人との間にできた要するに隠し子。しかし、真相を知る者はこの世にアキト本人とあの方しかいない。真実を知る者は皆死んだ。アキトの本当の母は彼を産んでからすぐ事故死。一人になったアキトをあの方は引き取った。幼い時から賢かったアキトは自分の生い立ちや、母がされたことなど自分で調べた。調べる内に組織幹部が、組織の跡継ぎの心配をして自分を引き取ることにしたことを知る。そして母は口封じのために事故に見せかけて殺されたのだった。それを知ったアキトはいずれ組織の長となるための英才教育を受けながら、幹部の弱みや野望を手に入れた。そしてアキトはやっと教育から離れ、一人前と見なされた。その時から彼の復讐は始まった。母を死に追いやった幹部を一人一人違う手で抹殺していった。組織の中では幹部たちが不自然な死を遂げたと話題になったが、犯人をアキトだと気づいたのはあの方ただ一人だった。あの方はアキトに謝罪し、「何が望みだ」と聞いた。望み?そんなのない。復讐ができればそれで良かった。復讐が終わったら自分も死のうと思っていた。でももし、組織に残れば他のいろいろな情報を手に入れることができるかもしれない。そう考えたアキトはあの方に言った。「ボスにはならへん。その代わりスパイにして」

あの方がしぶしぶ了承し、アキトはスパイになった。そして彼は持ち前の明るさと天才的な情報収集能力で、ある時は対立する王国のパン屋、ある時は人体実験、そしてまたある時は暗殺屋へのスカウトマンなど実に様々なことをした。アキトは才能を発揮して組織に貢献している。しかしやはり、彼の本気を見たことのある人は誰もいなかった。それを見せるのは母の前だけだったから。